#02
口の中でも生き続ける大根
命を守る機能が働く植物たち
「生と死とは?」なんて話になると、「哲学的だね。」と言われることがあります。
とは言っても、日常生活を送っていると、豪雨が続けばドキドキもするし、知人が出産したなんて話を聞くと、改めて命の誕生をしみじみ感じることもあります。
「ペットが赤ちゃんを産んだ」というのも、命を感じる素晴らしい瞬間だと思います。
けれど、動くこともせず、声も出さない植物はどうでしょうか。
野菜づくり・ガーデニングに力を入れられる方を除けば、なかなか植物の命を改めてしみじみと実感する機会って少ないように思います。
私が暮らしている家の音響熟成木材について、「木は伐採されたあとも生きていますよ。」なんて話を聞いていましたが、実際に住んでみて実感したりしています。
もともと木は生きているからこそ、高温でパッと乾燥させるなんてことはしないで、音楽を聴かせてやって、気持ち良く余分な水分だけを抜いてあげるのがいいのだろうと思います。
こう言うと、「いやいや、明らかに幹を切断して、樹皮も剥いだでしょ。」と思われる方もいらっしゃると思います。
確かにその通りなんですが、植物の場合は、切断されても、粉々にされても「命を守る機能」が働くことは、いろんな場面で見られます。
今回は、身近な「大根」を例に挙げて、詳しく見ていきましょう。
料理をしながら、食べながら、植物の命を存分に感じられるようになるはずです。
「大根」って、変わった「根っこ」?
大根は、古くから愛され続けいる野菜です。
とても丈夫で、育てやすい。
それに、何より美味しくて、大きくなってくれるので、ありがたい存在です。
きっと、それぞれの地域で、思い切り愛されたのでしょう。
大根を使った調理は、無数にあると言っても過言ではありません。
・大根おろし
・おでん
・切り干し大根
・たくあん など
そして、昔から「大根おろしは、おろし方によって味が変わる。ツンっと辛い大根おろしにしたかったら、大根の先の方を、激しくおろしたらいいよ」と言います。
これは、ただの迷信ではなく、本当にそうだと実感したことがある方も多いはずです。
実は、この様なことが起きることと命との間に深い関係があるのです。
「大根」は漢字の通り、根菜類に分類されますが、どうみても、大根が成長してくると、根なのか茎なのか分からない状態になります。
半分が地面に埋まっていて、半分が地上に出ています。
正確には、この地上に出ている部分が「茎」で、地面に埋まっている部分が「根」ということになります。
よく観察してみると、大根の上の方は、表面がツルっとしていますが、下の方に行くほど、凸凹した感じが強くなって、細いヒゲの様なものも多く見られます。
この茎と根の違いが、大根おろしの味の違いのもとなのです。
地面の中には生物がいっぱい
土の中には、モグラなどの動物もいれば、虫や微生物もたくさんいます。
当然、彼らも生きていくための栄養を求めています。
ところが、どの植物も誰かに食べていただくことを理想として成長している訳ではありません。
ですから、大根だって、動物や虫に食べられると嫌なわけです。
そこで、大根は、動物や虫に食べられるリスクの高い部分に辛味成分をしっかりと蓄えて、自分自身を守るようにしています。
動物や虫が、大根をかじると、細胞が潰れます。
その時に、潰れた細胞から辛味成分が出るようにしています。
激しく大根を攻撃すればするほど、辛味成分が出て、自分に返ってくるという見事な仕組みになっています。
だから、私たちがつんと辛い大根おろしを食べたいのなら、「大根の先の方を激しくすり下ろせばよい」と言われるのです。
畑から取り出されても防御しつづける
ここで、改めて見直したいのは、大根は畑からひっこ抜かれても、自分を守ろうとする機能がしっかりと働いているということです。
大根おろしのように粉々にされても、やっぱり自分を守ろうとし続けます。
人間から見れば、畑から切り離された時点で、死んでしまったかの様に見えるかもしれませんが、大根は、私たちの口に入る瞬間まで、自分を守る機能を働かせているという風に見ることもできそうです。
そう言えば、ねぎの苗なんて、干してひからびたものを使うことがあります。
人の感覚で言えば、ミイラ状態で、死んだものに感じるかもしれませんが、土に植えて、しばらくすると水々しく成長していきます。
そんな姿を見ると、植物の命というのは、人が考える次元とはまったく別の様に感じるのです。
今日も自然発信基地に遊びに来てくれて、ありがとうございます。
みんなが植物の命を実感することができたら、もっともっと優しい社会になるような気がします。
●大根のパワーを美味しくいただく「寒干し大根の漬物」レシピはこちらから